アメフト不毛の地からトップリーグへ「otonari福岡SUNS」の挑戦

アメフト不毛の地からトップリーグへ「otonari福岡SUNS」の挑戦

otonari福岡SUNS

2023.02.13

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「不毛の地」と呼ばれた九州のアメリカンフットボール界

アメリカンフットボールは文字通り、アメリカの国技とも呼ばれるスポーツである。アメリカではプロリーグ「NFL」が圧倒的な人気で、決勝戦にあたる「スーパーボウル」と呼ばれる試合では有名アーティストがハーフタイムショーを実施し、視聴率も毎年40%を超える、全米一のイベントとなっている。

日本でのアメリカンフットボールはというと、社会人の日本一を決める「ライスボウル」、大学日本一を決める「甲子園ボウル」、高校生の日本一を決める「クリスマスボウル」とそれぞれのカテゴリで盛り上がりを見せるが、大学スポーツが主流となるスポーツのため、関西・関東圏にチームが集中し、なかなかそれ以外での地域での普及が進んでいないのが現状である。

九州においては、大学生のチームは14校活動をしているが、高校生以下のカテゴリには1つもチームが無い。社会人リーグのチームもXリーグに加盟していないチームが3チームあるのみで、関西・関東圏と比較すると大きく後れを取っているのが現状であった。

 

九州初のX league加盟チーム「福岡SUNS」創部

2017年1月に「福岡SUNS」は創部された。チームを創部した代表の吉野至(当時28歳)は関西大学を卒業した関西出身の人物だ。彼は2011年に大学を卒業後、就職した会社の配属地の関係で福岡に住居をうつした。その後、縁があり西南学院大学のアメリカンフットボール部のコーチに就任したのち、2012年にはヘッドコーチに就任し、様々な形での文化構築を成し遂げ、チームを九州史上初の全国大会ベスト4(2015)、九州リーグ6連覇(2014~2020)へと導き、九州のアメリカンフットボールのレベルを格段に上昇させた。

学生を指導する中で彼には大きな悩みがあった。「大学で始めたアメリカンフットボールを、誰も社会人で続けてくれない。」当時も九州には社会人のチームもあったが、Xリーグには加盟しておらず 、大学卒業後も頂点を目指すことができる環境は九州にはなかった。卒業後ほぼすべての選手が競技を引退してしまう。この環境を変えることができないと、九州のアメリカンフットボール界の未来はない。そう思い、2016年に勤めていた会社を退社して、九州初のXリーグ加盟チーム創部を決意した。

創部時の苦難

チームの創部には様々な障壁があった。「メンバー確保」「練習場所」「資金確保」。どれも、アメリカンフットボール文化の根付かない九州ではとても難しいことであった。

吉野はまずチームとしてのミッションを掲げた。「九州にアメリカンフットボールの文化を構築する」「九州から日本一を本気で目指す」。そのためにはXリーグに属するチームが必要だ。当時の状況から、多くの人からそんなことは無理だと笑われながらも、彼はその実現に向け、選手集めを始めた。九州の大学を卒業し、今は普通の社会人生活を送っている元アメリカンフットボール選手たち、関西・関東の大学を卒業し偶然福岡に住んでいる選手たち、一人一人にチーム創部にかける熱い思いを伝え続けた。

チーム構想から半年後の2016年12月にはおよそ50名が集まった。練習場所は、吉野がヘッドコーチを務める西南学院大学が協力してくださることになり、あとは資金確保だ。ここに大きな障壁があった。創部の構想から毎日のようにスポンサー営業で会社を訪問する。しかし200社ほど回ったが、1社からも支援を得ることはできなかった。それもそのはずだ、九州では誰もアメリカンフットボールを知らない。Xリーグなど聞いたこともない。毎回の商談で「ラグビー?」と聞かれるようなところからのスタートであった。チームがXリーグ加盟の認可を受けた2017年1月の時点でスポンサーは0社。

もしこの状況が続くと、1人当たりおよそ年間30万円かかる費用を選手それぞれに負担してもらわないといけなくなるかもしれない。それを選手たちに説明したうえで、それでもやりたいという仲間たちが残った。はじめは博多の小さな公園で8人からのスタートであった。

初戦圧勝からの初のメインスポンサー獲得

8人からのスタートではあったが、徐々に選手たちが集まり、2017年4月29日に記念すべき初戦を迎えることとなった。スポンサー企業は1社もなく、真っ白なユニホームでの試合。相手は岡山スタンディングベアーズ(現 佐藤建設スタンディングベアーズ)だ。

創部たった数か月の九州のチームがどれだけやれるのか、不安と期待が入り混じる中、福岡SUNSは「36-0」で見事勝利。歴史的な勝利だ。この試合の結果を見て、困難を極めていたスポンサー営業にも大きな動きがあった。商談を進めていた株式会社オーパーツの原野社長が「このチームは本物だ」とメインスポンサーとしてチームの支援を決めた。関連する企業にも声をかけてくださり、一気に10社のスポンサー企業からの支援を受けることになり、ようやく様々な課題が解決した。

初参加のグリーンボウルジュニアトーナメントも5連勝で優勝。最終戦から「オーパーツ福岡SUNS」として、10社のスポンサーを背負い戦った。九州のアメリカンフットボールがようやく1歩目を踏み出した瞬間であった。

 真っ白なユニホーム(2017429日)

 

 グリーンボウルジュニアトーナメント初優勝

 

普通のアメリカンフットボールチームになったらいけない

この九州においてXリーグのチームを維持拡大していくのは簡単なことではない。ほかのトップチームは、元々実業団組織のチームが多く、大きな母体企業があるところがほとんどだ。そんな中、全試合遠征というハンデを背負いながら戦いを続けなくてはいけない。常にスポンサー企業を募集しながら、ミッションである「文化構築」をしていかなくてはならない。

「ただアメリカンフットボールをやるだけではいけない。ただのアメリカンフットボールチームになったら終わりだ。」代表の吉野は創部から現在に至るまでずっとこれを言い続けている。創部から現在まで様々な形での地域貢献活動や、普及活動を行ってきた。試合前は選手皆でビラ配りをし、選手全員で試合の設営をする。メディア発信も活発にして少しでもファンの方の目に触れるようにする。

これをやり続けているからこそ、3605名という九州では考えられなかったような集客を可能にしたのであろう。

 早朝にゴミ拾いや、災害支援など地域貢献活動に積極的に参加

 

中学校でフラッグフットボールの指導

 

創部から5年で日本トップリーグX1SUPER昇格

様々な取り組みをする中、福岡SUNSは驚異的なスピードで駆け上がる。創部から21連勝し、たった2年で当時のトップリーグX1に昇格。昇格のタイミングでX1がX1SUPERとX1AREAに別れ、X1AREA所属となったが、2021年シーズンについにX1SUPER昇格を決めた。

吉野は快進撃の裏側には「運」もあったという。アメリカンフットボールというスポーツにはQB(クォーターバック)というポジションがある。このポジションが司令塔と呼ばれ、試合の結果を大きく左右する。ほかのポジションにどれだけいい選手がいても、QBがダメなら勝てない。そういわれるほどに重要なポジションだ。福岡SUNSはこのポジションに恵まれた。

創部時は、強豪立命館大学のエースであった「前田寛二」、九州リーグ初の全国ベスト4に導いた西南学院大学の「原口良太」と他1名が在籍。そして2019年には、また元立命館大学のエースで全国優勝の経験を持つ「西山雄斗」が加入。前田も西山も、元々福岡出身ではなく、会社の転勤の都合で偶然福岡にやってきた選手だ。奇跡のような「運」もあり、そこに導かれるようにほかにも多くの選手たちが集まった。

また、近年Xリーグには多くの外国人選手が在籍をしている。ほとんどの外国人選手がプロ契約のような形をとる中、福岡SUNSはチームの正社員として、アメリカンフットボール以外のことを業務として雇用する。全員が仕事をしながらアメリカンフットボールをしているのだ。昨年まで所属したブランドン・ベリー選手、ドニー・キング選手、現在所属するダニエル・ワイズ選手。皆、英会話講師として仕事をしている。ほかのチームの待遇と比べると決して良いとは言えない待遇だが、彼らはこのチームに在籍できていることが幸せだと言う。常にチャレンジを続けるチームとともに歩むことがとても楽しいようだ。そういった多くの力が合わさりX1SUPER昇格という偉業が成し遂げられた。

 

バラエティに富んだ選手達

チームには様々な選手たちが在籍する。普通のアメリカンフットボールチームは「強化」を中心とした人材採用をする。もちろん福岡SUNSもそうであるが、それだけではないのが福岡SUNSだ。

「文化構築」「普及」を掲げる福岡SUNS。2020年には元お笑い芸人でブルゾンちえみwithBとして一世を風靡した「コージ・トクダ」が選手として加入。彼を中心に様々なメディア戦略を行い多くアメリカンフットボールの新規ファンを獲得した。翌2021年には、元プロ野球選手の田村丈(横浜DeNAベイスターズ)、元プロラグビー選手の筬島直人(コカ・コーラレッドスパークス)、黒川ラフィ(現ルリーロ福岡所属)が加入。

何歳からでも競技をスタートすることが出来、頂点を目指すことが出来るスポーツであるということを伝えることで、競技の裾野を無限大にしたいという思いで吉野は競技未経験の選手たちの指導に熱を入れる。また、本場アメリカのNFLを目指すプロジェクトを立ち上げ、横山海マクスウェル選手を獲得。他にもオフェンスラインの巨漢選手2人で「おかず力」チャンネルを立ち上げたりと、様々な視点から、選手個人にファンをつける活動に力を入れている。

実際に福岡SUNSでは選手個人のグッズが販売されており、中心選手のみならず多くの選手のものが購入されている。少しずつファンができつつあるという。

 

株式会社otonariと共に目指すビジョン

いよいよ2022年9月11日からX1SUPERでの戦いがスタートする。初戦の相手はオービックシーガルズ。2戦目は富士通フロンティアーズ。いきなり日本のトップ2チームとの試合だ。

なかなか厳しい戦いが予想されるが、吉野はこれからも戦い方を変えないという。福岡SUNSらしく「試合を最高に楽しむ」「謙虚に全力で」。そのうえで一歩ずつ焦らずに強くなって、その先にある日本一を達成したい。いつか来るその日の為に、常にチームを維持拡大させていかなければならない。

株式会社オーパーツ、株式会社みらいふ、株式会社イコールワンホールディングスとメインスポンサーとしてチームをつないでいただき、8月1日から株式会社otonariとの「otonari福岡SUNS」が始動した。株式会社otonariは「otonari」というアプリの運営会社で、メーカーから配られるサンプル品などを 近所にあるお店の店員さんなどからもらったりできるアプリだ。九州圏内で2万7千店舗が導入し、ユーザーも86万人を超える。

九州には大きな力がある。株式会社otonariの萩野社長はそう語る。事業を拡大して、九州になくてはならない大切な文化を支援していきたい。このotonari福岡SUNSをなくてはならないものだといってくれた萩野社長の思いにこたえるべく、これから様々な形で協業し、ともに九州を盛り上げていく。

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