ある若者の情熱が生み出した、新しい福岡の冬の風物詩

ある若者の情熱が生み出した、新しい福岡の冬の風物詩

クリスマスマーケット福岡

2022.11.09

毎年、11月中旬からクリスマスまでJR博多駅前広場の博多会場、福岡市役所前広場の天神会場を中心とする、福岡市の中心街で行われるクリスマスマーケット。
会場には光り輝くイルミネーションと共に、欧州風のヒュッテが多数立ち並び、欧州の雰囲気そのままに飲食やホットワイン、雑貨店などに人が賑わう。
舞台では、福岡九州で活躍するミュージシャン、オペラ歌手など本格的エンターテインメントが披露されワインを片手に人々の笑顔があふれる。来場者数は年々増加し、今や福岡の街の冬の風物詩として福岡県のみならず周辺各地から人々が訪れる一大祭りに。

それは、たった一人の福岡の若者の情熱が生みだしたものだった。

 

 

クリスマスマーケット“生みの親” の想い

クリスマスマーケット生みの親、(株)サエキジャパン代表の佐伯岳大氏。
彼は、いわゆる「一般企業」に就職したことがない。大学在学中にとある事業を始め、そのまま起業。その頃から先輩経営者の集まる会合などによく参加し、大御所経営者からさまざまな話を聞かされていた。

 

 株式会社サエキジャパン
  代表取締役  佐伯 岳大氏

 1981年生まれ。2000年の19歳の時に起業。様々な活動を経て、2007年株式会社サエキジャパンを設立。
2013年の冬にクリスマスマーケットをスタート。2022年現在、福岡の冬の風物詩としてエリアを拡大中。

 

 

当時福岡は、オリンピック招致や新空港設立の話が上がっており「若い世代が福岡の将来を考えなくてはいけない」などと言われ、その頃から福岡の街を盛り上げる意識が芽生えていた。

しかし結局、オリンピック招致も新空港も話が無くなってしまい、福岡に注目イベントがなくなってしまった2007年頃、知り合いの女性経営者から
「ドイツのクリスマスマーケットが素晴らしいから一緒に見に行こう」と誘われ11月末ドイツへクリスマスマーケットを視察に訪れた。

 そこで佐伯氏が見たものは、想像と何もかも違っていた。

当時日本のクリスマスというとイルミネーションが主体で、みんな「ただの景色」として素通りするものでしかなかった。
しかし、日本より数倍寒いドイツの夜空の下で、マグカップ片手にホットワインを飲みながら体を寄せ合って夢を語る姿はとても衝撃的だった。

市役所など街の広場に300以上ものヒュッテが立ち並び、ただ見るだけのような受動的なお祭りではなく、市民のみんなが参加して積極的に楽しむ姿が印象的だった。

 沢山のおしゃれなクリスマス雑貨が並ぶ様子

 

福岡は、春はどんたく、夏は山笠など代表的なお祭りがあるが、冬はみんなが楽しめるようなイベントがこれといってなく寂しかった。

そこで佐伯氏は、福岡の冬の新たな風物詩をつくり、街を楽しいものに作り変えたいと思った。

 

困難を乗り越え
”福岡の冬の風物詩”へ

ただ、過去に実績も経験もなく「とにかく開催したい!」という想いだけで企画書を作ってみたが、結局厳しいなと諦めてしまい、また次の年も企画書まで作ってみたが諦めということが2、3年続き、彼の中では半ば諦めてしまっていた。

そんな中2012年12月、友達から再び「来年やろうよ、チャレンジしてみようよ」という話になり、そこで急遽ドイツ・フランスのクリスマスマーケットを視察に行った。
その感動の勢いそのまま、JR博多シティさんにぜひクリスマスマーケットやりましょうと提案した。どうなるか分からない中とにかくやりたいっていう思いだけで突っ走った。

多くの方から「場所が借りれないよ」とか「お金が集まらないよ」、「冬の福岡に誰がお酒を飲みに来るの?」等の声も受けた。

それでも自分がドイツで見てきた世界を多くの方が見に来てくれる事を信じて突っ走り、
ついに2013年11月、クリスマスマーケットin光の街博多を開催することができた。
結局1年目から本当に多くの方に来ていただき、多くの方にご協力を頂き大盛況に。

 

 左:中洲であい橋にも巨大なツリーが / 右:会場内の多数のサンタ人形がフォトスポットに

 

 毎年変わるオリジナルカップが大人気

 

欧州の雰囲気をそのまま再現した初回から、段々と博多らしさを加え、博多人形のサンタクロースを限定販売したり、アートフェアやオペラ、クラシックなどエンターテイメントを加えていった。
その後、博多から天神・大分・鹿児島、そして大丸・中洲等色々なところでクリスマスマーケットやイルミネーションを展開。
今では来場者、規模ともに日本一となり、福岡の中心は天神から中洲、博多駅まで冬は鮮やかなイルミネーションに彩られる希望あふれる街となった。

 

 左:毎年大勢の人でにぎわうJR博多駅前会場 / 右:福岡市高島市長も大きな期待を寄せる

 

そんなクリスマスマーケットも今年で10周年。

新たにVlsion for2030というテーマで、楽しい冬の福岡、世界一のクリスマスマーケットを目指してこれからも挑戦は続く。

 

夢をあきらめない。
夢は必ず実現出来る。
今年も素敵なクリスマスを。